父が鉄道員だったためか、わたしは鉄道風景にひかれます。鉄道特有の直線と曲線が交錯する動的なイメージや、セピア系の色彩を目にすると、再々絵にしたい衝動に誘われるのです。この『K駅構内』は、市内の高台にあたる多賀山公園を散歩していたとき、突然目前に広がるK駅の眺望に遭遇し、その感動をスケッチしたものです。眺望する構内風景を凝視していると、息つく間もなく列車や貨車が動いている。実に興味深い。家族三人でこの公園を散歩したとき、構内を流れる列車や機関車や貨車の動きを、三歳になる男の子もじっと見入っていた。怪奇なおもちゃや昆虫を連想しているのだろうか。妻は意外にも「イモムシみたいね」という。
ダイナミックで動的なイメージは生々しく、過去における人間とのかかわりあいをも語りかけているようで、時間の過ぎさるのをつい忘れてしまう。
『K駅構内』─イマジネーションの宝庫である。