懐かしい昔の小学校唱歌に「今は山なか今は浜、今は鉄橋……」がある。この曲を思い出すと、廃線になって久しい南薩鉄道と金峰山の風景を思い出す。
広い田園地帯の中に大きく座して見える金峰山は、雄大な変化があり、山の稜線も美しい。
小学校時代「昔々、金峰山と野閒岳がケンカして、金峰山が勝ったそうだ」の伝説を聞いたことがある。この地方のシンボル金峰山は多くの神話や伝説があり南薩地方の霊峰として崇拝されてきた。 吹上浜沿線を走る列車から見える金峰山は、当時の北多夫施駅と南多夫施駅の中間地点からの景観が最も美しいと思っている。しかし、人それぞれの視覚に対する固定の観念があるらしく、阿多・加世田方面など、自分の住まいを中心にした景色を絶賛して譲らない。
つい先日、JR九州の車窓から熊本の金峰山を見た。歴史や神話のある山らしいが、私の固定観念は、やはり熊本の金峰山になじめなかった。
金峰山を背景に、田園の中を走る南薩鉄道の風景は、私の脳裏から離れない出身地(ふるさと)の心象風景である。