暮色が濃くなると、N 駅構内は若者のような生気をとりもどす。流れるように動く列車や、ひしめきあう人波。朝夕のラッシュ時は、通勤通学生などで混雑し吐き出す人波を吸収して活動する。私は、こんなK市特有の風景が好きだ。
たくましいエネルギーや生活の臭い、あふれ出る庶民的な感情、それは喜びにもりあがり悲しみによどむ生活の川。私にとってのN 駅は、生活の縮図が見えるイマジネーションの宝庫である。
青年教師時代、甲南中や伊敷中に勤務した。N 駅周辺の住人となり、好きな鉄道をテーマに絵を描いた。
その後、県下各地を転々として、21 年ぶりのK 市勤務は、N 駅との再会であり、終着駅を思わせた。
駅は、過去と現在の関わりを、しみじみと語りかけてくれる。そんな思いもあり、N 駅構内で定年退職記念の鉄道風景画個展をした。