霧島山麓の神社本殿に、私の油絵があることを思い出し立ち寄った。静かな山間集落の集いの場となっているらしく、きれいに清掃されていた。
人の気配の無い本殿中央からガラス越しに中を覗き込んで、20数年前、この神社入口階段付近にイーゼルを立てて描いたことなどを思い出した。社殿中央部は、欄間の高さ程に、私の絵と寄進、瀬戸口正明(牧中教頭)と宮司直筆の書が見えた。天井に近い位置なので、絵画の細部は見えなかったが、神社を画面上部に描き階段や杉林を構図したアウトラインは十分確認できた。境内の周辺を歩きまわり、階段を下りはじめたら、近くの住人らしい年配の御婦人二人に出会った。見知らぬ車と男が突然現れたので、挙動不審者と見られているようである。丁寧に「今日は!!」と声を掛けたら二人の気持ち良い反応が返ってきた。
私は20数年前、この校区の中学校に勤務したことや、この神社の宮司さんから、この神社を描いた絵がほしいと依頼された動機などを話し自己紹介した。
お二人の説明では、この神社は、集落の集いの場になっているので、私の描いた絵と名前は記憶に刻み込まれているとのことで、身に余る光栄で嬉しかった。
当時、鹿児島市立美術館であったグループ展に出品した絵が、こんな崇高な所に存在する不思議と、この土地にご縁があった絵画記録の幸せに感謝しながら、この神社を後にした。