玄界灘に対面した唐津市で、絵画公募団体主催の「唐津を描く」写生会があり参加した。二百人以上の参加者は4つの写生コースを選択しバスに分乗 した。
私は、唐津周辺の古駅舎(鹿家)の記憶があったので、JR筑肥線を利用してのスケッチを希望し、単独行動となった。
福岡空港と唐津を結ぶ筑肥線は、福岡空港―姪浜までは福岡市営地下鉄として走り唐津までの各駅もアクセスする全国でも珍しい特色のローカル線で ある。
古駅舎「鹿家駅」は県境の福岡県側にあり、隣駅の浜崎駅(佐賀県唐津市)、虹の松原駅、東唐津駅と続いている。
当時の私は、東唐津駅―鹿家駅間を往復した。虹の松原や美しい海岸線を眺めながら12分で鹿家駅に着いた。乗車券は220円。無人駅で、昭和 11年頃の建造物らしく、住宅と駅舎を合体させたような様式である。列車や路線の見える側面から見る駅舎は半世紀以上経過した住宅を見るようだった。
乗降客も極めて少なく、自家用車が時折駐車するが、この駅を利用する送迎が目的だった。水彩用の水が必要で駅のトイレ、水道を捜したが見あたらない。近くの商店で水をもらい、トイレ、水道の無い不自由を話すと、何らかの理由で撤去されたと無人駅の無念さを話された。この駅へ大勢の仲間 (特に女性)を同行してのスケッチは、お奨めできないと思いながら、2時間後、次の浜崎駅へ移動した。