JR肥薩線が旅行人の人気コースになっている。温泉、高原列車、スイッチバッグ、ループ線、古駅舎など、ローカル線の古い舞台装置が魅力の理由 である。人吉駅は、吉松駅からの山岳路線と八代駅らの日本三大急流のリバー渓谷を結ぶ中核駅である。山岳盆地に広がる町の景観は、相良藩の歴史を感じさせる風情が漂っている。
鹿児島中央駅発の特急はやとの風の終着駅、吉地駅で中継する人吉行き「いさぶろう・しんぺい」号に乗車して人吉駅入りした。構内の面白い風景が 印象に残り、スケッチしてカメラに収めた。構内の一隅に、大きく座して見える三角ドーム・ピラミッド状の車両庫がある。黒くて古い建造物は国鉄時代の歴史を語る廃墟のようだが、中に停車中のジーゼル車両が見えた。
九州では珍しい鉄道の原風景を回想させるテーマを発掘感動となり、今年の展覧会出品作(100号と120号)の題名は「構内一隅の回想」とした。
スケッチの時、阿蘇山麓(豊肥線)を走るワインレッドの列車や、第3セクター、くま川鉄道の発着風景も見られた。構内一隅の車両庫を近くで多面的に取材したくなり駅長に相談したら、ヘルメットを着用させられ駅長同行での構内散策となった。豊富な取材の収穫駅。駅舎も城郭和風様式で、駅よし、人よし、水よし、景よし、史跡よし、温泉よしなど、駅周辺は目玉いっぱいの町である。
2007(平成19)年12月25日第391号